在宅酸素療法

在宅酸素療法とは

近年、喫煙による肺気腫(COPD)による在宅酸素療法(HOT)導入の方が増えております。
2021年、新型コロナウィルス感染症の蔓延によりマスコミでもクローズアップされ、酸素ステーションの開設・在宅酸素の機械の不足などが取り上げられておりましたので、 テレビでその映像をみた方も多いと思われます。
在宅酸素は英語ではHome Oxygen Therapy(略して我々はHOTと呼びます)と表記されます。
在宅酸素療法によってご自宅でも入院中と同じように酸素を長期的に吸入する事が出来るようになりました。
ご自宅での設置は家庭用の空気清浄機を一つ置くくらいの大きさというイメージで理解いただくとよいです。
お部屋の中の空気を濃縮させ高濃度酸素を作り出してカニューレから吸えるようになりますので、酸素ボンベは不要で酸素が無くなるという事はございません。コンセントを差し込む電源さえとれれば問題ありません。
外出時は引いて歩けるタイプや背負えるタイプの携帯用酸素ボンベを使用します。

適応にある疾患

在宅酸素療法は慢性期の様々な呼吸器の病気の患者様に使用できます。指先に装着するだけで測定が可能な酸素飽和度(SpO2)をみながら酸素開始の検討をしていきます。
酸素飽和度の測定は近年のコロナウィルス感染症の蔓延で自宅に用意していらっしゃる方も増えております。

在宅酸素療法の保険適用基準

  • 高度慢性呼吸不全例
  • 慢性心不全の対象患者
  • チアノーゼ型先天性心疾患

と明記されておりますが、高度慢性呼吸不全例とは「肺に慢性の病気があってSpO2が常時90%を下回っている、もしくは動いた時や寝ている時に更に下がる方」と理解してください。
上記のように保険適応上は心臓が悪い患者様にも適応になります。

よく適応になる肺の病気としては
下記です

  • 肺気腫(COPD)
  • 間質性肺炎
  • 肺結核後遺症
  • 肺がん
  • じん肺

タバコを続ける事で肺気腫になり、在宅酸素療法が必要になる患者様もとても多いです。
現在喫煙中の方は将来自分が在宅酸素療法のお世話にならないためにも、予防できる事として禁煙に取り組んではいかがでしょうか?

効果

在宅酸素療法の導入の効果

  • 息苦しさが軽減し、生活の範囲が広がる事が期待できます。
  • 頭痛や注意不足、イライラなどの症状が改善されます。
  • 睡眠中の低酸素を改善し、睡眠の質が良くなる事が期待できます。
  • 低酸素による心臓や身体中の内臓の負担を減らします
在宅酸素療法の導入の効果

身体の血中酸素飽和度(SPO2)は正常では96%以上ある事がほとんどですが、病気によりSPO2が90%未満に常時下がり続けていると、体が慣れてしまい息苦しさを感じなくなる方もいます。
しかし、細胞レベルでは「酸素不足」による窒息が起きていますので、様々な病気の発症リスクが上昇してしまいます。
在宅酸素療法は究極の対症療法です。以前、訪問診療を開始した患者さんで肺に病気とSPO2低下が起こっており、常日頃から息苦しさを感じて日常生活がままならかなった方 がおりました。
酸素療法を開始したところ、すぐに顔色もよくなり室内の歩行も問題なく睡眠もしっかりとれるようになりました。
動けるようになったため廃用によるさらなる体力の消耗を抑える事が出来ました。
もともとの病気を改善するための治療ではありませんが、息苦しさを感じる本人の苦痛は大きく、在宅酸素療法はそれを改善し生活の質(QOL)を保つための最大の武器になります。

開始から導入まで

酸素開始の判断

医師が診察にて病名の把握と現在の酸素の状態をみて必要な酸素量を決めます。

酸素機器の手配、設置

医師が患者様に必要な酸素の量を判断し、それに見合った大きさの機械を手配します。 委託した酸素機器業者さんがご自宅へお伺いし、機械を設置します。
この時、電源の入れ方、酸素量の変更の仕方、外出時のボンベの使用方法、機械のトラブルなど緊急時の連絡方法などをご説明していただきます。

導入後のフォロー

酸素機器導入後は月1回の診察が必要になります。その都度、患者様の酸素の投与量が適切かどうかチェックをしていきます。

導入後の注意点

導入後の注意点文字通り酸素を鼻や口から流す治療法になるため火気の扱いには注意が必要です。
酸素療法中のタバコは絶対にしないでください。また料理などで火を使う場合も危険ですので行わないようにお願いいたします。

飛行機に乗る際の注意点

在宅酸素療法を受けている患者様が飛行機に乗る場合は一定の手続きが必要です。

  1. 航空会社に酸素ボンベの使用について申請 申請はおおよそ2~3日前までに行い、書類の提出が必要です。
  2. 診断書、酸素ボンベ等仕様証明書の作成  診断書は搭乗日を含めて14日以内に作成したものが有効となります。
  3. 搭乗可否の決定  患者さん自身が診断書等を航空会社にFAXあるいは郵送して、診断書の内容を吟味された上で搭乗の可否が決定します。 

在宅酸素療法の費用

在宅酸素療法にも医療保険が適用されます。
患者様のご負担は以下の通りです。

  • 1割負担の場合 毎月7680円
  • 2割負担の場合 毎月15360円
  • 3割負担の場合 毎月23040円

経済的な負担は高額療養費制度などを利用する事でも軽減できる可能性がありますので、 ケアマネジャー、お住いの市区町村などに問い合わせてみるのもよいと思います。
また呼吸の障害の程度により身体障害者手帳の申請を行う事が出来ます。当院でも申請書の発行が可能です。
認定の程度により福祉器具のレンタルや交通機関の割引きなどの福祉制度を受けられる事もありますのでご相談ください。在宅酸素療法を有効に活用しみなさまの健康維持に貢献出来れば幸いです。

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