咳喘息とは
日本では慢性の咳の原因としては最も頻度が高く、日常診療でもよく遭遇する病気です。 喘息は気管支が狭くなりゼイゼイいうのに対して、咳だけが症状の場合を咳喘息と言います。
病態としては両者ともに同様ですので治療内容も全く同じになります。一般のかたは咳喘息と言われてもピンとこない方も多いと思いますが、呼吸器内科の外来をしていると長引く咳の原因として咳喘息は圧倒的に多く最もメジャーな病気です。
きちんと治療をすれば大部分の方が改善傾向に向かいますので見逃したくない病気です。
近年では検査方法もだいぶ確立されてきており、クリニックでも簡単に検査ができるようになりました。
咳喘息の症状
寝る前から明け方にかけて咳が悪化する事が多いです。
患者さんは「布団に入ると咳が出るんだよね」とおっしゃったりします。
また「温度差が刺激になって出る」と言われる事もあります。主に乾いた咳が出て、痰はあるとしても少量です。
悪化する要因
- 風邪
- 季節の変わり目
- 気圧・温度の変化
- ストレス
- 運動
- 花粉症や黄砂
などがきっかけになる事が多いです。
咳喘息の診断
日本呼吸器学会の2019年のガイドラインでは咳喘息の診断基準は下記の通りです。
- 喘鳴を伴わない咳嗽(がいそう)が8週間以上持続 (聴診上喘鳴をみとめない)
- 気管支拡張薬(β2刺激薬)が有効
上記①、②をともに満たす場合に診断するとされております。8週間以上と明記されておりますが実際には患者様は2~3週間程度でも咳が続くとだいぶしんどいので咳喘息が疑わしい場合は8週間待つわけではなく積極的に治療を行っております。
ここで最も大事な事はやはり肺癌や肺炎などの重要な病気を見逃さないために胸部レントゲン検査を行う事です。また参考所見として、最近では呼気一酸化窒素(NO)検査、オシロメトリー(マスタースクリーIOS○R)検査で数値やグラフでの評価も可能となりました。
数字やグラフで咳喘息の診断の助けになる事もありとても重宝しております。私が呼吸器内科医として働き始めた16年前はこの検査は施行できず咳喘息の治療をして効いたから咳喘息でしたね!と判断をしていた事が懐かしいです。もちろん当院で上記検査はすべて即日可能です。
咳喘息の治療
治療内容は気管支喘息と同様で吸入ステロイドが中心になります。
その他、気管支拡張薬や抗アレルギー薬を追加する事がありますが、治療のメインは吸入ステロイドである事は忘れてはいけません。
治療をすると1週間ほどで改善する人も多いですが、症状が改善したらそこで治療をやめるのではなく、気道の炎症はまだ残っているため治療期間は3~6か月をおすすめいたします。
治療経過も呼気NO検査やオシロメトリー検査でフォローができます。
吸入ステロイドの治療を開始して楽になるとすぐに治療をやめてしまう方がおりますが、咳喘息患者さんの30%程度がいずれ気管支喘息に移行するともいわれており、慎重に経過をみていく必要があります。
症状軽快後も気道の炎症は残存していると言われており、すぐの再発を避けるためにも、3か月程度は治療をおすすめいたします。