気管支喘息とは?
当院では生物学的製剤の使用は行っておりません。必要時は総合病院へご紹介させていただいております。
喘息外来(中学生以上)
気管支喘息とは、アレルギー物質や運動・天候の大きな変化などで気管支が収縮し、内腔が狭くなる病気で呼吸困難やゼーゼーするなどといった症状を起こす病気です。
今となっては吸入ステロイド薬による治療の劇的な進歩により、喘息の治癒は難しくても生涯コントロール可能な病気となっております。しかし、30年前私が元住吉の井田小学校に通っていた頃は治療も確立されておらず、近隣の川崎市立井田病院の中に「あおぞら学園」という喘息の子のための寮と学校があり、そこには全員喘息の病気をもった子供たちが暮らし、学んでおりました。症状が安定している期間のみ井田小学校に通い一緒に勉強をしたのを覚えております。
そんな「あおぞら学園」も喘息治療の進歩により平成9年をもって閉園となりました。
喘息もちの場合でも今ではオリンピックの選手にもなれる時代です。是非「タバコは吸わず」、この時代に生まれたことに感謝して喘息に苦しまない生活を送っていただきたいです。
気管支喘息の
症状
- 息苦しい(呼吸困難)
- 主に息を吐く時にぜーぜー、ヒューヒューと音が出る(喘鳴)
これらの症状は夜間や早朝にかけて悪化する事が多く、問診でも重要な内容になります。
小さい発作ではゼーゼーするというだけですが、発作の程度が進むと横になって寝られない(起坐呼吸)、身体の酸素飽和度(SPO2)の低下がみられるようになり、意識がもうろうとしてきます。
気管支喘息の
診断
持病に喘息がある場合とそうでない場合ではこの先に他の病気になった際の検査、治療の内容を決めるうえで、行えない検査や使えない薬剤があるなど大きな差が生じてきます。
現代では呼気NO検査のような機器も実際に参考にできますが、昔は問診と聴診のみで診断をしていた状況もあり、気管支炎で痰が絡んでゼーゼーしているだけでも喘息と言われて治療を受けたケースなどはあります。
ただ、それだけ喘息の診断が難しいという側面もあるのです。
私たち呼吸器内科医の喘息の診断
- 呼吸困難や喘鳴を「繰り返す」こと
- 問診により過去にアレルギーのエピソードが多い事、家族に喘息の患者さんがいる事
- 気管支拡張薬を使って喘鳴や呼吸困難が改善する(可逆性がある)事
- 他のゼーゼーする病気を除外する事
といった事などから総合的に喘息の診断をしております。
喘息は病理検査でがん細胞が見つかれば肺がん、CT検査でこの所見があればこの病気!というように分かりやすいものではありません。
むしろ症状のある喘息患者様の胸部レントゲンを確認すると全くの正常な結果となります。
それだけ診断は難しく、診断は慎重に行うべき病気です。
当院での喘息の診断に関して
- 問診、聴診はもちろん大切にする
- 呼気一酸化窒素(NO)検査、オシロメトリー検査を行い数値やグラフで評価する
- 気管支拡張薬を処方して、治療の反応をみて判断
- レントゲンや必要があれば、CT検査や血液検査を駆使してゼーゼーする他の病気を除外する
という形で喘息を診断していきます。すべて即日の検査が可能です。
呼気NO検査は小学校低学年ですと難しい検査になるかもしれませんが、オシロメトリー検査は筒を加えて安静の呼吸ができれば検査終了ですので、4歳から施行可能と言われており、小さい子の喘息の診断の補助としても有用です。
呼気NO検査
息を吐いて行う検査ですが、思いっきり吐くのではなく、やさしく息を吐いて検査をします。
2013年に保険適応となり現在多くのクリニック・病院にて使用されております。これにより気道の好酸球性(アレルギー性)の炎症の程度を数値で見て評価が出来るようになりました。
座りながら息を吐き2分程度で施行可能なため、検査による患者様のストレスもほぼ 無くとても楽な検査です。
呼気NO検査メリット
- 喘息の診断に使える
- 喘息の治療経過を評価できる(治療がうまくいくと数値が下がってきます)
- 咳が続く人に、通常の風邪の後の咳なのか咳喘息なのか評価が行える
呼気NO検査数値の解釈
- 成人25ppb未満、小児20ppb未満 → アレルギー性の炎症の可能性は低い
- 成人25ppb以上、小児25ppb以上 → アレルギー性の炎症の可能性がある
- 成人50ppb以上、小児35ppb以上 → アレルギー性の炎症がとても強い
35ppb以上の結果の場合は喘息の診断で間違いないというデータがあり、指標にして患者様には説明をしています。
アレルギー性鼻炎をお持ちの方は数値が高く出る事、また喫煙をしている・喘息の発作時は数値が低くでる傾向があります。検査料金は3割負担で800円ほどで検査が可能です。
オシロメトリー検査
近年の新しい呼吸機能検査方法になります。
他の呼吸機能検査では患者様が息をふぅーっと吐く努力が必要でしたが、こちらの検査は筒を加えていただき30秒間安静の呼吸をするだけで測定が可能となっています。
気管支の狭さ、肺の柔らかさの評価が出来るため実際には、
- 喘息の評価
- 肺気腫(COPD)の評価
に有用です。簡単な検査のため4歳以上で施行可能なため上記の呼気NO検査が難しいお子様でも施行可能となります。
機械がとても精密で難しい計算を行い結果を出してくれますが、結果を図にしてお渡しできますので見た目でご理解がいただけます。検査料金は3割負担で500円ほどで検査が可能です。
気管支喘息の悪化の
原因
- 感冒、インフルエンザなどの感染症
- アレルギーを起こす物質(スギ、ヒノキ、ブタクサなどの花粉、ハウスダスト、タバコの煙など)
- 運動
- 気圧の変化、季節の変わり目
- ストレス(心理的な要因)
- ペットの飼育
感冒や気圧の変化などは避けたくても避けようがありません。そのため発作が起きた際もひどくならないように普段から喘息のコントロール状況を把握し、適切に治療を行う事が大切です。
ペットのアレルギーがあるけれども飼育を続けているというケースも珍しくはありません。
愛着のあるペットをすぐに手放すのは厳しいという方が大半ですので、治療を並行しながら、是非新しくペットを増やさないようにせめてお願いをしております。
気管支喘息の
治療
① 長期管理治療 (慢性期の治療)
当院では生物学的製剤の使用は行っておりません。総合病院へご紹介させていただきます。
喘息の慢性期の治療はなんと言っても吸入ステロイド薬につきます。
30年ほど前から使用されるようになり喘息死が劇的に減りました。先述の「あおぞら学園」の閉園もこの吸入ステロイド薬の普及による結果です。
まさに喘息患者様にとっては魔法の薬と言っても過言ではないと思っています。
ステロイドというワードを聞くと副作用が不安になる方が多いと思いますが、内服のステロイド剤と異なり大きな副作用はなく、妊娠中でも安心して使用が可能です。
吸入ステロイド薬以外の治療法として
- 抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(内服)
- 抗ヒスタミン薬(内服)
- 長時間作用性抗コリン薬(吸入)
- テオフィリン製剤(内服)
これらを組み合わせて使用をしますが、私はよくこう説明をさせていただいております。
「吸入ステロイドがメインディッシュでその他のものはおかずと思ってください」 私はこの説明を10年以上患者様に続けていたのですがよく考えてみるとメインディッシュもおかずでした。
要は治療のメインはやはり吸入ステロイド!という事を伝えたいです。
例え他のおかずである治療の飲み忘れなどがあったとしてもメインディッシュである吸入ステロイドは是非しっかり継続をしていただきたいです。
吸入ステロイドの唯一の副作用としては声がれがあります。吸入後にしっかりうがいをして予防をしていただきますが、歯みがきの前に吸入する事をおすすめしております。
歯ブラシの横に吸入ステロイドをいつも置いておけば忘れることもなく、その後歯をみがいてうがいをすることになりますので副作用の予防もでき一石二鳥です。是非試してみてください。
吸入ステロイドのデバイスとしてはドライパウダー製剤といって粉っぽいものからスプレータイプのものまであります。それぞれのデバイスにより粒子の大きさが異なります。
患者様のご希望や状態に合わせて選択をさせていただきます。また吸入の方法ですがお子様はうまく吸えないという方もいます。
その場合はエアロチャンバー、もしくはネブライザー器具を用いて効果的に吸入が可能ですので状況に合わせて提案させていいただきます。
エアロチャンバー
ネブライザー
② 発作時の治療
まずは気管支拡張薬(β2刺激薬)を吸入していただきます。つらいときはネブライザーが効果的です。
小さい発作であればこの治療で落ち着くことが多く、スプレータイプの製剤もあり(商品名はメプチン、サルタノールインヘラーなど)β2刺激薬の吸入は自宅や外出先でも施行可能です。
β2刺激薬は喘息そのものを治療するわけではないので「その場しのぎのお守りです」と説明をさせていただいております。是非自宅や外出先に持参し発作時のお守りにしてください。
よく患者様がメプチンやサルタノールを「最後の切り札」と勘違いされて使用を我慢している方がいらっしゃいます。たとえゼーゼーしていなくても呼吸苦を感じたり、呼吸の違和感があれば使用をしてみてOKです。
使用後の症状の経過を御自身でみていただき、もし効果があれば楽になり生活の質を上昇させますので、必要時はためらわないで使ってみてください。
これらの副作用としては動悸、手足の震えがあります。私自身も使用すると手の震えがでますが、その場合はメプチン、サルタノールともに1回2プッシュで使用するところを1回1プッシュへ減らして使用してみてもいいでしょう。
横になると苦しくて寝られないという状態の患者様は中程度の発作に分類されます。
その場合は、内服もしくは点滴でのステロイドの治療が必要になります。喘息の発作はよく火事に例えられます。燃えさかる炎に少量のお水をちょろちょろとかけても一向に火は消し止められません。
ステロイドも同様に治療は最初に躊躇せずしっかりした量を使用し、まずはちゃんと火を消す作業が必要です。 治療に抵抗性の発作を起こす際、または発作を短期間で繰り返している際、原因検索を行いますが、喫煙をされている患者様が一定数いらっしゃいます。
喫煙は先ほどの魔法の薬である吸入ステロイドの効果を減弱し、慢性期の喘息治療の邪魔をします。
また喫煙から肺気腫につながり肺気腫と喘息を合併した状態になる事も近年言われております。
喘息患者様は御自身の将来に向けて特に「禁煙」について真面目に取り組んでみる事をおすすめいたします。
川崎市喘息患者医療費助成制度
川崎市におけるアレルギーの対策として、喘息患者医療費助成制度があり、申請がとおると医療費の助成が受けられます。これにより患者様は自己負担額1割となり、通常3割負担の患者様にとっては、とてもメリットがあります。横浜市や東京都在住の方ですとこの制度は受けられません。川崎市だけの制度になります。
- 川崎市に1年以上住んでいる
- 気管支喘息の診断が医師によりなされている
- 喫煙をしない事が約束できる方
以上の条件にあてはまるかたは申請が可能です。
当院にも申請書を準備しておりますのでご希望のかたは当院にて採血、胸部レントゲン検査を施行いただければ申請書を作成させていただきます。(小児では検査は不要になり申請書の記入のみを行います)